不幸
|
私は結局そこで何を見つけたのか、覚えてはいないけれど。包帯ぐるぐる巻きのウサギとか、ぐしゃぐしゃにつぶれたイチゴとか、ただそういうものを求めていた気はする。 雨の中ふと立ち止まって傘を閉じてみたり、晴れの予報の日にてるてるぼうずを逆さまにつるしてみたり。雨が好きだったわけではないけれど、晴れが嫌いだった。 人は沢山好きになるくせに、いつもいつもさみしくて死にそうで、だから私はいつでも誰かを好きだった。それがどんな結果になろうとも、好きであることをやめたり、好きになることをやめたりするのは違う気がして、それにできなくて、だから私はいつも不幸だった。 絵を描いたり、言葉を書いたりすれば、あるいは、救われるんじゃないだろうかと思って。 そしてたどり着いた場所には、結局何があったのか。 私は結局そこで何を見つけたのか。 (本当は覚えてるの) 不幸な自分に酔っている自分とか、そういう風に装っている自分とか、嫌いで、でもそうしかできなくて。 ふと気がついたら貴方が隣にいた。 貴方は何か恐ろしいものを背負っていて私は怖かった。貴方が微笑んで 「愛してるよ。」 とつぶやくときが、私の一番の幸せで、それから一番の不幸だった。臆病に震えていた私は、それでも貴方が好きで、それでも貴方が怖かった。 いつからか、携帯のランプが貴方の色に光らなくなって、私は、またか、と思った。ふとした瞬間に思い出すのは貴方の笑顔とか、貴方の声とか、貴方の匂いとかなのに。はっと気付くと携帯の画面には貴方からのメールが表示されているというのに。私の好きになる(私を好きになる)人はみんな、いつの間にか私じゃない人と歩いてる。 それを辛いと思っていた頃は、私は幸せで、頬も赤くて、目もきらきらしていて。でも、辛いと思わなくなって私は不幸。何処を見ても何処も見ていないような、触っても暖かくないような。 まただれかが私に 「愛してるよ。」 とつぶやくけれど、そして必ず私からは離れていくけれど、それでも私は絵も書くし言葉も書くし、そしてずっと不幸。 |