擬似愛
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愛とか恋とか好きとかそういう感情を無視したところでも、誰かに触れられたり誰かを感じたりする行為がもたらしてくれるモノにはそういう感情があるときと同じようなところがたくさんあるなと思う。 愛とか恋とか好きとかいう感情が意味のないものだなんて言うつもりはないけれど(むしろとても綺麗な感情だと思うけれど)。 というかむしろ、そういう行為の中にはたとえ偽物でも愛とか恋とか好きとかいう感情が入っているのだと思うわけで(何を偽物といって何を本物とするかの議論は別として)。 「アタシをここに鎖で繋いでおいてよ。彼女が来るときだけ外に放り出せばいいじゃない。」 もっとおもちゃみたいにしてくれればいいのに。 もっと罪悪感なんて消してしまえばいいのに。消えてしまえばいいのに。 中途半端に真面目でいることなんて、しんどいだけだって早く気付いてよ。 現実とかいう名前の毎日の生活から離れたところで誰かを待っていたい。アタシは何もしないし何も言わないから、だから誰かそばにおいて。 酷く深いところからくるような重い頭痛に悩まされることも、いつか子供を産むために今お腹が痛いことも、そんなのアタシの嫌いな現実でしかない。誰だか知らないけど、愛とか恋とか好きとかいう感情を非現実的なものにしてくれた人にアタシは感謝します。 「アタシは一番にはなれないの。」 そういったらアナタは少し笑っていた。同意してくれたのかなと思ったけど、実際どうなんだろう。アナタだってアタシを一番にはしないだろうし、アタシは自分がそんな女じゃないことを知っている。だけどアタシはいつだってアタシに触れてくれてアタシを感じてくれる人をそのときの一番にしてきた。そのずれがアタシを傷つけたりするんだけど、誰かがまたその傷を隠してくれればいい。アタシはいくらだって傷つける。 そうやって考えていくと、 アタシの長いつめは誰かの背中に赤い血の羽を生やすためにあるのかもしれないし、 アタシの長い髪は誰かがアタシの首に巻きつけるためにあるのかもしれない、と思う。 アナタはアタシに触れるたび誰かを裏切るの。それでいい。 だってアタシはこうやって愛されてる誰かに嫉妬するしかないんだから。 アタシは愛されない。でも、アタシは愛されたい。 愛されないことはアタシの武器になる。みんな愛されないアタシを見て、自分は愛されていると優越感に浸るけど、男は愛さなくてもいいアタシを便利に使ってくれる。その度アタシの傷は増えるけど隠されるから。 だけどアタシは愛されたい。 いつかアタシも愛されたい。 そして、愛されていない誰かを見てみたい。 そして、アタシを愛さなかった男たちを蔑んでみたい。 アナタはアタシがこういうことを考えてるのを知っていて、アタシを擬似的に愛してくれるのね。 |