致死量の受精卵
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あたしの皮膚の三ミリと少し下に、何かが巣食っている。 あたしの皮膚は時々ぼこぼこと波打つので、あたしは怖くなって皮膚を裂いてみるが、そこにはもう何もいない。 あたしの皮膚の下に巣食っている何かは、そうやってあたしに存在を知らせるくせに決して出てこようとはしないの。 波打たなくなった皮膚はぱっくりと口を開けて、あたしには肉があることを示してる。 あ、あ、 五線譜には音符を書き込むでしょ? 画用紙には絵を描くでしょ? シャープペンシルを手にとって、あたしは紙を目の前に、この紙は何のための紙だったか考える。 さてどうしたものか。 あたしには皆目わからない。この紙は何のための紙だったか。 仕方なくシャープペンシルは机の上において、今度はマニキュアを手に取る。 それから、自分の爪が割れてしまっていることを思い出して、マニキュアはしまう。 もう一度シャープペンシルを持って、考える。 この紙は何のための紙だったか。 あ、あ、あ。 そうこうしているうちにまた皮膚が波打ってくるの。 あたしはシャープペンシルを置いて、剃刀を手に、どこを切れば巣食っている何かが正体を現すのか考える。 しかし同時に、どこを切ったって何も出てこないことも知っている。 とりあえず気休めにどこかを切って、何もいないことを確かめてから、やっぱりシャープペンシルを持つの。 あ。 あ、あ、 あたしは考える。 あたしの皮膚の下の何かは、そのうち卵を産む。 あたしはその卵に栄養をとられて死んでしまう。 致死量の受精卵 ゆっくりとあたしは死んでしまう。 だから卵を産む前に、皮膚の下から引きずり出さなきゃ。 あ、あ、あ、 シャープペンシルを片手に考える。 この紙には何を書けばいいんだろう。 そしてあたしは、妄想の果てに受精卵に犯されて死んでしまう。 |